図書館で表紙が気になって手にとった雑誌をパラパラめくっていたら、
とても興味深いページがありました。
コレが正解!ということがないのが育児。
きっと誰しも、コレでいいのか間違っていないか…と不安や悩みを抱えているもの
だと思います。私自身も、不安や悩むことばかり。特にこれからの世の中、どのよ
うに見守っていったらいいのか、とついつい不安になりがちですが、ちょっとだけ
ヒントをもらえたような気がしています。
子育てと庭 〜心の引き出しを増やす体験を〜
自然を体験することの重要性や子どもの成長という視点で庭の在り方を考える。
というタイトルの岡山大学大学院教育学研究科教授 高橋敏之さんの文章から
以下、印象に残った部分をピックアップして載せさせていただきました。
2010年、独立行政法人国立青少年教育振興機構が行った
「子どもの体験活動の実態に関する調査研究」で
「子どもの頃の自然体験はその後の人生に影響する」という結果が得られた。
成人に対する調査結果は、子ども時代の体験が豊富な人ほど
「やる気や生きがいを持っている人が多い」
「丁寧な言葉を使うことができるといった日本文化としての作法、教養が高い」
「小学校低学年までは友だちや動植物との関わり、小学校高学年から中学生まで
は地域や家庭との関わりが大切」
「年代が若くなるほど、子どもの頃の自然体験や友だちとの遊びが減ってきている」
の4点が挙げられた。
子どもにとって、自然の中で遊ぶことは教育的な価値が大きいと言われており、
大きく分けて二つのことを学んでいる。
第一は生命の生と死。
自然は人間も地球上の生命のひとしずくであることや、
全ての動物は他の動物は、ほかの命を奪って生き延びている事を教えてくれる。
第二は、同じ生命の仲間である動植物を知ること。
自分が見つけた動植物を昆虫図鑑や植物図鑑で確認することは、それ自体が楽しい
学びであり、動植物の飼育や栽培は、科学の目と心を育ててくれる。
しかし、悲しいことに日本の自然は確実に減少している。
●庭づくりは高度な知的行為
園芸は、四季折々の移ろいの中で、時間と空間をデザインしていく高度な知的行為
であり、草花の高さや色合いを考えながら、想像(imagination)と創造(creation)に
頭脳を使い、体も動かす理想的な活動であると言える。
庭には身近な自然があり、様々な体験ができる。たかが庭されど庭。五感を刺激する
体験は、知らず知らずのうちに体に刻み込まれその人の心の引き出しを増やしていく。
一方で、公園に集まってゲームに没頭する子どもたち。その子たちは、つくられた
バーチャルな世界をかなり高額な金銭とともに消費するのは得意だが、何かを創造
する時には、実体験の多さが確かな助けになる。バックアップしてくれるのは、豊か
な経験の蓄積である。
多くの場面で当てはまることではあるが、特に子どもの成長には、バランスが大切
である。五感を刺激する身近な自然から得られる体験と、最新のテクノロジーに慣れ
親しむこととは、両方とも現代人にとっては大切なことである。しかし現状は偏り
すぎていないだりうか。確かに日本語はよくできている。多くの人が指摘するように
「家庭=家+庭」であるから、「家庭」には、「家」と「庭」はそれぞれ必要条件で
はあっても、単独では十分条件とは成り得ないのだろう。両方揃って初めて、必要
十分条件になるようである。
*高橋 敏之 岡山大学大学院教育学研究科教授、芸術学博士。
専門は保育内容学、芸術教育学、児童文化学。